理学科地球科学専修

地質学・鉱物学・岩石学などの固体地球の探究を中心として、字宙物理学や惑星科学も包含する地球科学の諸分野を学習します。理工系の研究科に進学する学生も多く、学部・大学院一貫教育を実施しています。

取得できる学位
学士(理学)
取得できる教員免許状
理科(中学1種・高校1種)

特色

1
固体地球科学の広い分野をカバーしており、興味に合った研究に取り組むことができる。
2
地球科学で重要な現場観察(野外調査)を深く学べるカリキュラムを提供。
3
物理・化学・生物を含む理学全般の学識や技術を身につけることで学士(理学)を取得。
 

幅広い理学的素養を備えた固体地球科学分野の専門家や教育者の育成

地球科学専修では、地球を構成している気圏・水圏・固体圏のうち、固体圏を中心に探究を行っています。地球外の固体圏として、太陽系に由来する隕石も探究しています。大地を作る岩石には、地球が生まれて46億年の間に起こった出来事が記録されています。地球科学はこの記録を読み取り、過去に生起した事件を解明するロマンに満ちた科学です。これらの成果は地球環境問題の対策をはじめ資源開発・防災など人間の生活を支える基礎となっています。

原子の単位から大陸の規模まで、さまざまな大きさにわたっている地質記録を読み取る理論と技術がカリキュラムの中心をなしています。また、地球科学が地球を対象とする学問であるため、本専修では講義のほかに、実験・演習や野外調査も重視されています。学生は山野をかけめぐって地層や岩石の状態を調査して過去に生起した事件を解明し、採取してきた標本をさまざまな分析にかけて岩石がつくられた環境や条件を推定します。地層中の化石も生物の進化と地球環境を物語る大切な試料として研究されています。このようなカリキュラムのもと、卒業生は、地球規模の視野と悠久の時の流れの感覚を身につけます。

 

YOKOYAMA TOMOO
理学科 地球科学専修 
4年
※2023年当時
横山 智雄

子どもたちに地球科学の奥深さを伝えたい

「この石はどこから来たのだろう?」地下から来たのかもしれないし、山から来たかもしれない。もしかしたら宇宙から来ているのかもしれない。それを解明していった先には46億年分の地球のあらゆる歴史が詰まっています。その歴史を丁寧に紐解いていくことに魅力を感じています。
現在は堆積学研究室に所属し、まさに岩石を通して過去の地球を読み取る研究をしています。そして過去の地球に何が起こったのかだけでなく、未来の地球に何が起こっていくのかを日々考えています。
また、同時に地球科学の魅力やサイエンスの面白さを、多くの子どもたちに伝えたいとも強く思っています。
将来的には大学院に進学し更に研究を進めつつ、教育にも携わることで、次世代の子どもたちに地球科学の奥深さを伝えていきたいです。

 

授業紹介

地球科学実習(北海道巡検)

貸し切りバスを利用し北海道中央部を7日間かけて一周します。訪問地は三笠、神居古潭、層雲峡、日高、襟裳岬、洞爺湖などです。この巡検では、日本列島の生い立ちを「実感・体感」しながら学べます。例えば火山で足元の地熱を感じたり、化石を採取したり、大陸と大陸が衝突した現場に立ったりすることができます。また人類未踏の場所であるマントルの物質を実際に手にする機会を得ることができます。

岩石学実験

岩石学研究のプロセスとテクニックを学びます。学生ごとに異なるサンプルを調べます。肉眼観察、薄片作成、偏光顕微鏡での薄片観察・写真撮影、SEMによる鉱物の観察・組成分析を順に行います。観察に基づき岩石形成過程の仮説を立て、仮説を鉱物組成分析により検証するという、プロセスの重要性も学びます。並行して採取地域や火山の文献調査も進めます。最終回にはパワーポイントを使った一人10分程度の成果発表を行います。

 

研究室紹介

進化古生物学研究室 守屋和佳教授
未知との遭遇:進化古生物学研究室

化石に記録された生命進化と地球環境変動

進化古生物学とは、化石記録に見られる進化を研究しようとする学問です。私たちの研究室では、地層に残された古生物の形態や生態、種の多様性の変動や、炭酸塩化石の炭素・酸素同位体比などの地球化学的手法を合わせて生命の進化の歴史、地球の古環境の変遷を解析しようとしています。

進化古生物学研究室では、学部4年生から博士課程の学生・大学院生が、様々な時代について多様な手法で研究をしています。特に、地球化学的手法を用いた研究に力を入れており、古生物の棲息場所や生活様式の進化と絶滅や、過去の海水温や生物生産性などの海洋環境についての解析に取り組んでいます。化石そのものを観察して生物について解析する手法と、化石に隠された化学的なデータを解析する手法を組み合わせて、生物の進化と地球環境の変動との関連を明らかにすることが私たちの研究室全体の大きな目的です。

1mmにも満たない小さな生物から、地球の過去の環境を推測する

研究室では、白亜紀のような温暖な時代や、現在の南極氷床につながる氷床が初めて形成された始新世/漸新世境界において、有孔虫と呼ばれる原生生物の化石を用いて研究を行っています。国際深海科学掘削計画(IODP; International Ocean Discovery Program)という、国際的な海洋研究プロジェクトにて採取された深海底の堆積物試料を用いた研究では、恐竜やアンモナイトの絶滅で知られる6600万年前の白亜紀/古第三紀境界(K/Pg)境界や、地球の気候が大きく変動した3400万年前の始新世/漸新世境界といった、地球史における大きなイベント時の浮遊性生物の化石記録や形態から古環境の解析を行っています。世界で唯一の貴重な試料を用いて研究を行うことができます。

また、野外調査で得たアンモナイトなどの大型の化石試料を用いた化石の産出様式や形態解析、現代の海洋調査にて採取された現生の浮遊性生物や二枚貝の生態や形態の解析にも取り組んでいます。肉眼では見えない小さな浮遊性生物の化石を用いた研究では、実体顕微鏡や電子顕微鏡用いて観察を行い、化石の多様性や形態の解析を行います。

最新の手法で“世界初”に触れる

進化古生物学研究室では、2019年度から研究室に導入された安定同位体比質量分析計を用いて、炭酸塩化石の炭素・酸素同位体比分析や,有機分子の炭素・窒素同位体比分析を行っています。これらの手法からは何がわかるのでしょうか?ここではその方法のうちの一つ、有孔虫の殻の酸素同位体比を使用する方法を紹介します。海洋に棲息する有孔虫は、その多くが直径1mmにも満たないような小さな炭酸カルシウム(CaCO3)でできた殻を持っています。この殻は海水に含まれるカルシウムイオンと重炭酸イオンから形成されますが、ここに含まれる炭素や酸素の同位体比が古環境を解析する鍵となっています。

この宇宙空間に存在する元素の中には,いくつかの安定同位体を持つ元素があります。例えば、天然で見られる安定同位体として、炭素は12Cと13Cの2つ、窒素は14Nと15Nの2つ、酸素は16O、17O、18Oの3つが知られています。有孔虫は殻を形成する時の水温によって、周囲の海水から取り込む16Oと18Oの割合が異なるため、CaCO3の殻に含まれる酸素安定同位体の比を分析することによって当時の海水温を逆算することができます。研究室に設置されている安定同位体比質量分析計では、真空中でCaCO3に酸を滴下し、発生したCO2をイオン化させ、その粒子を磁場の中に放出します。荷電粒子が磁場の中を移動するとローレンツ力が働き,その力は荷電粒子の質量に比例することは皆さんもよく知っていると思います。この作用により、12C16O16OからなるCO213C16O16Oや12C16O18OからなるCO2の移動軌跡が異なることから、各々を検出することで安定同位体比を計測することができます。こうして明らかになった海水温を用いることで、当時の海水温の季節変動や海流の変化など、地球の古環境変動を解析するのです。

IODPの試料や、私たちが野外調査や海洋観測で採取してきた試料は、世界中の誰よりも先に私たちが手にした試料です。それを最新の手法で分析することで、自らの手で世界初の分析結果を得ることができます。化石から遥か昔の古環境を知る面白さと、世界で唯一の試料から得られる結果を人類で一番最初に目の当たりにするという、ワクワクした気持ちを感じることができるのが本研究室の研究における大きな魅力です。

先輩の声

・進化や古生物というワードを聞くと恐竜などの大型の生物を思い浮かべる方は多いと思いますので、この研究室の様な研究というのはあまりしっくりこないな、と思うかもしれません。実際、僕自身も恐竜について学びたいと思い進化古生物学研究室に進みましたが、今では、肉眼で見えないほどの小さな生き物の化石の中に、過去の地球の環境に関する情報が詰め込まれているということにとても魅力を感じています。皆さんも一緒に、顕微鏡をのぞきながら大昔の地球に思いを馳せてみませんか?

・研究室では専門分野の研究を行いますが、教育学部に属しているため、教育学や歴史学、社会学など学部の他学科の講義を受けることができます。古生物学を本格的に学びながら、文理を問わない多様な学問に触れる機会が多くあることも本研究室の魅力のひとつであると思います。

 

進路状況

第一線の研究者として活躍

卒業生は中・高等学校の理科教員、鉱山・資源・環境・建設などの地球科学関連分野はもちろん、出版・製造・コンピュータ・科学機器業界などの多様な分野において、大学で習得した地球規模の視野と悠久の時の流れの感覚を活かして活躍しています。

さらに研鑽を積むために、本学大学院創造理工学研究科や他大学の大学院に進学する者も多く、すでに相当数が第一線の研究者として活躍しています。

2018~2022年度卒業生データ

教育学科[教育学専攻]教育学専修