社会科地理歴史専修

地理学・歴史学の両分野にわたり学習、研究を進めます。したがって、この専修の卒業生は、地理も歴史も担当できる能力をもった幅の広い教員として、現場の要請に応えることができます。

取得できる学位
学士(地理学)
学士(歴史学)※地理学・歴史学の別は、選択した演習により決定します。
取得できる教員免許状
社会(中学1種)
地理歴史(高校1種)
公民(高校1種)

特色

1
学問分野の壁を越える学び:地理学も歴史学も、基礎から専門まで学べます。
2
国内・国際情勢の読解力:「今」の背後にある諸地域の歴史を深掘りします。
3
汎用性のある学び:GIS(地理情報システム)などのスキルも学べます。
 

複雑な世界に地理学と歴史学を通して向き合う

地理歴史専修の特徴は、1・2年次で地理学と歴史学の両方の基礎を学ぶ点にあります。地理学と歴史学は、複雑な世界を具体的な事象や事柄に即して考える点で共通していますが、地理学は空間軸に、歴史学は時間軸に重きをおくという特徴があります。二つの別個に確立した学問体系をあえて一つの専修に編成することで、世界を空間と時間の両面から理解することをめざします。

3年生になると地理学か歴史学のどちらか一つの分野を選び、さらに専門的な学びを深めます。3・4年次の必修科目である演習(ゼミ)として、歴史学では日本史(古代、中世、近世、近現代)、東洋史(中国古代・近世史、チベット・モンゴル・満州の歴史、オスマン帝国史)、西洋史(古代、中近世、近現代)、地理学では自然地理学や、都市地理学・経済地理学・農村地理学・人口地理学・観光地理学などの人文地理学の各分野が用意されています。少人数の演習に参加して、フィールドワークの方法や調査結果の分析方法、文献や史料の読み方を学び、4年間の総仕上げとして卒業論文を執筆します。また、これらの必修科目に加え、バラエティ豊かな選択科目も開講されています。

このように地理歴史専修では、幅広く、しかも高度の専門性を身につけることができます。これにより、企業、官公庁、ジャーナリズムなどの各方面で活躍する人材を養成すると共に、中学校・高等学校の教員や、専門的な研究を目指す人にも十分応えられるようになっています。

 

ISHIGOKA FUMIYA
社会科 地理歴史専修 
4年
※2023年当時
石郷岡 史弥

歴史と地理の両分野から新しい学びを得ました

小学生の頃から社会科が得意科目でした。歴史学や地理学をより高い領域で学べると思い、地理歴史専修を選びました。1・2年次は歴史学・地理学ともに幅広く触れ、3年次からは分野を絞って専攻するカリキュラムが組まれています。歴史学や地理学と分野を絞らず両者を結びつけることで新しい学びを得られました。3年次からはより関心のあった地理学を専攻し、自然地理学ゼミを選びました。地理学は、地学的な視点や歴史学的な視点など複数の視点から本質を捉える学問です。ゼミでは資料やQGISという地図解析のパソコンソフトを使った研究のほか、実際のフィールドワークにも出掛けています。
教育学部というと、教員免許の取得が大変そうなイメージがあるかもしれませんが、早稲田大学の教育学部では、教員免許の取得が義務付けられておらず、私も教職科目は取得していません。その分、ほかの活動に時間を割くこともでき、ラグビーの公認審判員としても活動しています。
将来はここで学んだ物事を多角的に分析する力を活かした挑戦をしてみたいです。
教育学部には、ほかにも多くの学科・専攻があります。多くの友人たちと多くの刺激や学びという財産を得ることができます。

 

授業紹介

日本近現代史特論Ⅰ

歴史をたずねる方法といえば、文字史料が浮かぶと思いますが、モノや声も大事な方法です。文字の普及以前には、声によるコミュニケーションが大きな役割を果たしていました。文字の普及後も、人が経験を語る、聞くことで歴史をたずねるオーラル・ヒストリーが取り組まれてきました。この講義ではオーラル・ヒストリーに焦点を合わせ、文字史料とは異なる豊かな歴史の世界についてたずねます。

地理学研究法1~4

専門選択科目の1つである地理学研究法1~4は、地域で起きているさまざまな事象を主体的かつ的確に理解し、表現し、考察するための技術を身につけることを狙いとしています。2年生以上を対象とするこの科目では、文献の検索や地域統計の使い方、GIS(地理情報システム)を用いた地図表現、地形図や空中写真を用いた地形判読、フィールドワークなどを実習形式で学びます。

 

研究室紹介

歴史学/日本中世史 高木徳郎教授
史料を読み解くだけじゃない。
歴史の実像はどうしたらつかめるのか?

教科書に書かれていることは本当か?
その疑問が学問の世界への入口です。

皆さんは、日本史や世界史と聞くと、歴史上の人物の名前を覚えたり、そうした人物たちが成し遂げたことを学んだりすることというイメージがあるのではないでしょうか。確かに書店で「日本史」「世界史」などと掲げられたコーナーに行くと、その手の本の何と多いことでしょうか。ましてや中学・高校での勉強や受験勉強の時にやった「日本史」「世界史」はその最たるもの、人名や年号の暗記にひたすら終始するという、最悪の勉強を延々と繰り返してきた人も多いのではないかと思います。

しかし、大学へ入ってからの「日本史」「世界史」の勉強は、これまでとはまったく違います。例えば、私が専門としている日本中世史という分野では、確かに教科書では、この時代は「武士の時代」などとして描かれており、教科書にも「武家政権の成立」「武士社会の展開」などのタイトル文字が躍っています。では、直前の時代まで政治の中心にいた貴族たちは、中世に入った途端、完全にその力を失い、没落しきってしまったのでしょうか? あるいはまた、武士たちは、中世が終わった後の江戸時代(近世)にも生き残りますが、近世は「武士の時代」ではないのでしょうか?

そもそも教科書というのは、勉強する人に「分かりやすく」書いてあるものです。教科書が分かりにくかったら、勉強する気が失せてしまいますね。したがって、歴史の教科書の場合、前の時代から変化した部分を(時には必要以上に)クローズアップして、やや大げさに書いている側面が大きいのです。例えば「日本史」の場合、古代の貴族社会を打ち倒して、武士が政治の主役に躍り出た、と叙述すれば、そこで時代が大きく変わったのだ、と誰もが分かりやすく理解できます。時代の変化がどこにあるのかが分かりにくいと、2000年以上に及ぶ歴史の流れを理解するのはなかなか容易ではありません。

でも実際、世の中はそんなに「分かりやすい」ことばかりではありません。むしろ、分からないことがたくさんあるから、私たちの知的好奇心は刺激され、学問に取り組む意欲も湧いてくるのです。歴史学において、ある歴史的事実を証明しようという場合、様々な史料(資料)を多角的に検討することになりますが、その史料(資料)は無限にあります。

史料を読み解くだけじゃない。
歴史の実像はどうしたらつかめるのか?

ところで史料を読み進めていくと、時々、「壁」に突き当たることがあります。その「壁」にはいろいろな種類があって、「いくつかの史料に書かれていることを具体的に突き詰めていくとどうしても辻褄が合わない」という壁、「いま知られている史料だけではどうしても足りない」という壁など、様々な壁に突き当たることでしょう。そうした時には、もちろん、発想や視点を変えて別の史料を探してみたり、友人や教師の意見を聞いてみたりすることで壁を突破できることもあります。2~3年生から始まる「ゼミ」では、そうした意見交換や討論する力も養います。

しかし、それでも「壁」を突破できない時、思い切って教室や大学の「外」に出て答えを探しに出かけるのも、ひとつの解決の手立てです。史料で描かれている事柄の舞台となった現地を訪ねてみたりするのは、その第一歩でしょう。地図やガイドブックだけ見て分かった気になるのではなく、実際に足を運んでみると、歴史の「現場」は意外な発見に満ち溢れています。私自身も、3年生の時、卒論の準備をしようと、ある地方の農村を訪れた時の「発見」や地元の方々との会話が、今に続く研究の原動力となっています。

現在でも、毎年、夏休みや春休みなどの長期の休みの期間中には、地方へ史料(資料)調査や現地調査に出かけます。史料調査では、これまでまったく知られていなかった未知の史料に出会うこともしばしばで、現物の史料に触れてみて初めて分かることなども含めて、新しい発見が必ずあります。また、現地調査では、地元の方々の話を聞いたり、歴史的な遺構や遺物を探し回ったりしながら、史料や文献だけでは分からない様々な情報を集めていきます。こうしたことを繰り返しながら、少しずつ歴史の実態に迫っていくのが、私の研究のスタイルです。

教科書を捨ててフィールドに出よう!
そこにはまだ見ぬ「宝」の山が!

早稲田大学の受験に向けて頑張っている皆さんにこのように呼びかけるのはいささか酷ですが、大学に入って、「学問」や「研究」の世界に入る第一歩は、まずは教科書から自由になることです。私は入学したての1年生によくこう呼びかけます。「まずこの前まで使っていた教科書と用語集を捨てましょう。大学での学問はそこから始まります」と。皆さん、初めはきょとんとして聞いています。それもそうでしょう。これまで受験のバイブルとして疑わなかった教科書と用語集を捨ててしまったら、何を頼りに勉強していったらいいのか、不安になる気持ちも分かります。でもそこは大丈夫、地理歴史専修には、皆さんの不安を全力で支えてくれる先生方がたくさんいます。

そして次には教室を出て、フィールドに出ましょう。但し、この場合のフィールドは、最初は博物館や美術館、あるいはもっと手っ取り早く図書館でもいいでしょう。そこには教科書よりはよほど頼りになる書物や、皆さんの興味や関心をかき立てる様々なモノ(展示品)がたくさんあります。そこを中継地点にして、さらにその「外」の世界へと足を踏み出してみましょう。できればたくさんの仲間を誘って、その仲間たちと見聞きしたことについてあれこれ話し合いながら、興味の赴くままに世界を広げていくとよいと思います。そこにはまだ私たちが知らない「歴史」がたくさんあり、仲間たちと話し合うことでさらに自分の視野が広がっていくはずです。

 

進路状況

自分自身の知的関心に合わせ、広く学べる

必修科目に加え、バラエティ豊かな選択科目(教職課程科目を含む)から自分自身の知的関心に合わせ、地理学や歴史学に関連の深い他の人文・社会科学系、自然科学系の科目を選んで広く学ぶこともできます。教員免許状取得のための科目も充実しています。

卒業生は、中等・高等学校をはじめとする教育関連分野や、国家・地方政府機関、マスコミ、商社、金融機関など極めて多様な業種・業界で活躍しています。また、大学院教育学研究科への進学も卒業後の進路の一つになっています。

2018~2022年度卒業生データ

教育学科[教育学専攻]教育学専修